新型コロナウイルスが猛威を振るっている環境下、2021年も多くの経済・消費活動や企業活動が制限されることとなりました。
掛かる状況下、多くの「倒産」や「休廃業」等が相次ぐと見られていたものの、金融機関による積極的な資金供給や政府主導による補助金・給付金等により、その発生件数は大幅に抑えられることとなりました。
1.2021年の休廃業・解散件数の状況
大手信用調査会社の調査では、2021年の「休廃業・解散件数」は5万4,709件と、前年比▲2.5%とされています。(図A/※1)。
この件数減少の主な要因として、中小企業への各種資金供給施策が一定の成果を挙げたと考えられています。
しかしながら、休廃業・解散に伴う雇用消失は約8万人、売上高消失は約2兆2千億円に上る規模とされており、大きな影響を与えています。また、件数ベースで減少した一方、対「倒産」倍率は9.1倍に上るなど、いわゆる「あきらめ型」の休廃業・解散件数の増加が懸念されています。
(※1)帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2021年)」より
2.あきらめ型の休廃業とは?
2021年に休廃業・解散した企業の財務状況は、下図の通りとされています(図B/※1)。
特に、「資産超過且つ当期純利益黒字」であった企業の割合が16.0%であったことからも分かるように、財務やキャッシュに余力があるにも関わらず、ある意味で自主的に休廃業・解散を選択する企業が一定数存在していることとなります。
新型コロナウイルスの収束が不透明な状況において、今後もこのような「あきらめ型」の休廃業や解散が増加する可能性が示唆されています。
3.休廃業を選択している代表者の年齢
休廃業・解散を行った経営者の平均年齢は2021年に70.3歳となっています。50代/60代の同比率が減少したことからも、休廃業に至る経営者の高齢化が顕著となりました(図C/※1)。
経営者の平均年齢自体が上がっていることから一概には捉えられないものの、「事業承継」が難航しており、且つ近時の新型コロナウイルスの影響を受け「休廃業や解散」へと至る企業が多いことが想定されます。
4.最後に
近時、財務やキャッシュに余力のある状態で休廃業や解散の判断を行う経営者の方も少なくなく、その年齢も高齢化してきています。
休廃業等に伴うマイナスの要素(=雇用や市場・顧客に与える影響)も多分に考えられることから、ご判断に際して、一つの前向きな選択肢としてM&A等を活用した事業承継についてご検討されてみてはいかがでしょうか?
大手都市銀行にて約11年間に亘り、担当先企業の資金調達/事業成長支援(約5年)及び、自行の財務企画/予算・投資管理/コスト削減(約5年)、人事研修企画(約1年)に従事。
その後事業会社にて、グループ会社全体のバイサイドM&A戦略/実務に従事。
また、運輸交通/不動産/専門商社を始めとした多様な事業分野において事業・部門戦略/再生・成長計画の策定に関与。
LBPF入社後は、下記事業領域を中心としたM&Aに加え、主に東海、関西及び中四国エリアのカバレッジを担当している。
<主な事業領域>
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