経営者の年代別に見る経営および企業業績の特徴について、玉積がご紹介します。
先日のコラム「中小企業の後継者不足とその解決策」において、中小企業における後継者不在率の状況や、その要因について触れました。
中でも、少子高齢化や経営の先行き不透明感、事業承継にかかる準備や時間など、様々な課題から承継が進んでいないということは周知の事実となっています。
では、事業承継が進まないまま、成り行きで経営を行っていった場合、何が起きるのでしょうか?
今回のコラムでは、上記問いに対する客観的な見方の一つとして、経営者の年代別における経営及び企業業績の特徴について解説を行っていきたいと思います。
1.経営者の高齢化と低い交代率
中小企業庁の事業承継ガイドラインによると、経営者交代率は1994年以降長期にわたり低調に推移していることが見て取れます
(図A)。
これは、多くの企業において経営者の交代が起こらなかった結果、経営者の年齢が年々上昇していることを示しています。
なお、2020年においては、経営者年齢のボリュームゾーンは「60歳~74歳」に集中しており、
「70歳以上」の増加が顕著であるとされています(図B)。
(図A/B)中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」(令和4年3月改訂)
2.経営者の年齢と企業業績
経営者の年代別に企業業績を見ると、70代以上では「増収率の低下」が見られると同時に、「2期連続赤字」の割合が増える傾向となっています(図C)。
急速に変化する外部環境(IT化、新型コロナ・資源価格高騰など)への対応が求められる中、高齢経営者においてはその対応が後手に回るなどの要因があると指摘されています。
(図C)東京商工リサーチ「2021年「全国社長の年齢」調査」(2022年4月24日)
3.成長率の違いと成長への意識
事業承継が行われた中小企業の「売上」および「当期純利益」の成長率は、承継が行われなかった企業(同業種)と比較して
高くなる傾向にあるとされています(図D/E)。
また、下図は経営者の年代別に見た「成長への意識(図F)」と「投資意欲(図G)」を示しています。
この2図を見比べてみると、経営者の年代が上がるにつれ、「売上高を伸ばしていく必要がある」ものの
「自社の成長は市場の成長に依存している」と考えており、「リスク許容度」と「投資意欲」が低くなるということが見て取れます。
既述した「成長率の違い」が現れる背景には、こうした経営者の年代差における経営への意識違いが一役買っている可能性が高いと考えられます。
(図D/E/F/G)中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」(令和4年3月改訂)
4.最後に
外部環境が目まぐるしいスピードで変化を続ける昨今、経営の舵取りには迅速性・多様化への対応が求められています。
そのような環境下、会社としての成長を第一に考えた場合、意欲ある若い経営者やリソースを持った企業とタッグを組むことが現実的な選択肢の一つとなる可能性があります。
「親族内承継」のみならず、「更なる会社の発展を加速させる人財含めたリソースの確保」という観点で「親族外承継」についても前向きに検討されてみてはいかがでしょうか?
(参考コラム)
中小企業の後継者不足とその解決策(2022年3月25日)
休廃業問題~あきらめ型休廃業の増加~(2022年3月27日)
M&Aの目的とは?(2022年4月5日)
会社売却におけるシナジー効果とは?~M&Aを活用した会社売却や事業売却について~(2022年4月26日)
大手都市銀行にて約11年間に亘り、担当先企業の資金調達/事業成長支援(約5年)及び、自行の財務企画/予算・投資管理/コスト削減(約5年)、人事研修企画(約1年)に従事。
その後事業会社にて、グループ会社全体のバイサイドM&A戦略/実務に従事。
また、運輸交通/不動産/専門商社を始めとした多様な事業分野において事業・部門戦略/再生・成長計画の策定に関与。
LBPF入社後は、主に下記事業領域を中心としたM&Aに加え、主に東海、関西及び中四国エリアのカバレッジを担当している。
<主な事業領域>
・物流業界(貨物、旅客、MaaS関連(インフラ/IT等))
・設備工事業界(電気工事、電気通信工事、管工事)