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物流業のM&A動向(第1回目)~物流業の現状と課題~


2021年8月19日 M&A

物流業のM&A動向について、LBPF内で物流業界のM&Aを担当している玉積がご紹介します。

「物流の2024年問題」については第2回コラムをご覧ください。
物流業のM&A動向(第2回目)を読む→

 

1. 物流業界の現状と課題

物流業界の市場規模は約24兆円、就業者数は約258万人とされています。その内、トラック運送業が占める割合が最も多く、市場規模は約16兆円(全体の約70%)、就業者数は約193万人(同75%)となっており、その内中小企業の占める割合は99.9%とされています(※1)。

課題①:労働環境

トラック運送業において顕在化している大きな課題のひとつとして、ドライバー職における「低所得+長時間労働」が挙げられます(図A/図B)(※2)。
こうした労働環境から、「労働力不足+高齢化」といった問題が過去より取り沙汰されてきた一方、大きな改善が見られていないのが現状です(図C/図D)(※3 , 1)。

 

 

課題②:配送の小口化、輸送効率の悪化

近年、EC市場(とりわけB to C領域)の拡大により、従前の物流の根幹であった「定時性・定期性・大量配送」に加え、「適時性(即時性)・適切性・小口配送」といった役割が付加されてきました(図E)(※4)。
また、営業用トラックの積載率も近年約40%以下で推移しており、消費者(サービス購入者)のニーズの高まりと併せ、輸送効率の悪さが業界全体としての生産性の低下を招いていると推測されます(図F)(※5)。

(※1)国土交通省「物流を取り巻く動向について(令和2年7月)」より
(※2)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より
(※3)全日本トラック協会「トラック運送業界の景況感」より
(※4)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」より
(※5)国土交通省「自動車輸送統計年報」より

 

2. 物流業界の展望

これらの課題解決策として、自社における働き方改革だけでは不十分と考えられており、特に業界慣習(長い荷待ち時間や手荷役などの常態化)の見直しや物流効率化に向け、業界の垣根を超えた様々なステークホルダーとの密接な連携により解決策を講じる必要性が高まってきています。
また物流業界はデータの利活用による変革が最も期待される産業のひとつとされており、最先端技術の導入(例:AI・IoT、自動運転、RFID、AGV等)や、他社/異業種連携によるアライアンス(例:シェアリング、共同物流、ラストワンマイル等)による物流ネットワークの再構築が求められています(図G)(※6)。

(※6)日本経済団体連合会「Society5.0時代の物流(2018年10月)」より

 

このような動きは現状大手企業同士の連携として多くみられる一方、中小企業においてもその影響は少なくありません。

事業/資本規模の小さい中小企業においては、先に触れた課題が比較的経営環境の悪化に直結しやすいことに加え、効率的な物流ネットワークの構築/整備が進むほどに、自社単独での課題解決の難易度が上がっていく可能性も想定されます。

こうした状況を踏まえ、中小企業の「更なる成長+生き残り戦略」のひとつとして、M&Aによる企業の売却(=大手グループの傘下となること)が有効な手段とされています。

売却・譲渡の相談はこちら→

3. 物流業のM&A

2015年初以降、売手を物流関連企業とするM&Aは公表ベースで126件(注1)となっており、うち約8割は同業者を買手とする事例となっています(図H)(※7)。

 

(注1)国内企業同士の買収事例のみ。事業譲渡や資本参加事例は除く。
(※7)レコフデータより弊社作成

 

同業種同士のM&Aについては比較的イメージがしやすいと考えられることから、下記では、残り2割の異業種/周辺業種を買手とした事例についてご紹介をします。

事例① 企業名 エリア 主たる事業領域
買手 エア・ウォーター 大阪 産業ガス、医療、物流
農業・食品、エネルギー 他
売手 桂通商 京都 一般貸物、青果物流
物流センター運営
概要 西日本にて低温倉庫/大型一般倉庫を有する売り手の株式90%を取得。
エリアの物流事業強化と効率化を目指すと共に、青果物輸送と農業・食品事業連携により新事業創出へ取り組む。
時期 2020年

事例② 企業名 エリア 主たる事業領域
買手 トーモク 東京 段ボール・紙器、住宅
運輸・倉庫 他
売手 宝樹運輸、関西宝樹運輸
関東宝樹運輸
和歌山
大阪 他
一般貨物自動車運送
概要 今後の事業拡大と業績の安定化を図る為、西日本エリアの物流に強みを持つ3社を子会社化。
貨物量の増加を受け、人材・車両数の拡大を企図。
時期 2021年

事例③ 企業名 エリア 主たる事業領域
買手 アシードホールディングス 広島 自販機運営リテイル事業
飲料製造事業、倉庫業 他
売手 ロジックイノベーション 岡山 物流アウトソーシング
物流代行、リサイクル 他
概要 買手企業は昨年倉庫業の運営を開始。
売手企業のノウハウを活かし、買手企業ネットワークを活用することで、付加価値の高い物流サービスシステムの構築を企図。
時期 2021年

このように、異業種/周辺業種との間においても、「エリア・既存事業の強化」や「効率化・相互補完」、「新事業の創出」といった観点でのM&Aが行われるケースが一定数存在しています。

4. 最後に

当業界は従来から様々な課題に直面しており、現在においても大きな変革が求められています。また昨今の新型コロナウイルスの流行を受け、将来の見通しに不確定要素が加わったことから、スピード感を持った経営の舵取りや事業の見直しが必要です。

こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

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ここまでお読みいただいた方はこちらもご覧ください。
物流業のM&A動向(第2回目)を読む→

LBPF玉積

玉積 範将

大手都市銀行にて約11年間に亘り、担当先企業の資金調達/事業成長支援(約5年)及び、自行の財務企画/予算・投資管理/コスト削減(約5年)、人事研修企画(約1年)に従事。
その後事業会社にて、グループ会社全体のバイサイドM&A戦略/実務に従事。また、運輸交通/不動産/専門商社を始めとした多様な事業分野において事業・部門戦略/再生・成長計画の策定に関与。
LBPF入社後は、下記事業領域を中心としたM&Aに加え、主に東海、関西及び中四国エリアのカバレッジを担当している。

<主な事業領域>
・物流業界(貨物、旅客、MaaS関連(インフラ/IT等))
設備工事業界(電気工事、電気通信工事、管工事)

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