中小企業の経営者がM&Aによる会社の売却を検討し始めた際、初めにぶつかる課題として「いったい誰に相談をすれば良いんだろう?」という悩みがあるかと思います。
このような経営者の相談窓口としてはいくつかの候補(取引金融機関・顧問士業・M&A専門家・公的機関 等)が考えられます。
(参考コラム)
M&Aによる会社売却をご検討される際の留意事項~事前準備編(2021年9月10日)
M&Aによる会社売却をご検討される際の留意事項~実行編(2021年12月1日)
M&A局面における顧問税理士とアドバイザーとの付き合い方(2022年7月25日)
今回のコラムでは、M&A専門家の選び方について、玉積が解説したいと思います。
1.M&A専門家とは
M&Aに携わる専門家には様々な機関(企業等)が存在しており、一般的に業務委託契約の形態別において下図のように整理されます
(図A)。
規模の大きい会社(利益水準で数億円~)もしくは業種柄多数の投資家候補が見つかる可能性が高い会社であり、売手優位で交渉を進めることが可能な場合は「FA」としての契約が好ましく、比較的小規模であり投資家候補探しに少し時間が掛かりそうな場合やクローズドで進めたい場合は「仲介」での契約が好ましいとされています。
(参考コラム)
M&Aによる会社売却をご検討される際の留意事項~実行編(2021年12月1日)
下図は、2021年8月に中小企業庁により創設された「M&A支援機関登録制度」に登録されている支援機関およびその構成を示しています(図B/C/D)。
2021年度中の登録機関数は2,823件となり、その約8割程度が「仲介・FA」の両業務を行う機関であることに加え、構成比としては「M&A専門業者」と「士業」が太宗を占めています。
(図B/C/D)中小企業庁「中小M&A推進計画」の主な取組状況(2022年6月21日)
2.M&A仲介とFAの違いは?
M&Aの検討を進めて行くことを概ね決断した後、具体的にどのようなM&A専門家に依頼を行うかについての検討が必要となってきます。
ここでは、図Aにおいて触れた「仲介」と「FA」について、その違いを見ていきましょう(図E)。
①M&A仲介とは?
一般的に、同一の専門家が売手及び買手双方の間に立ち、中立の立場で交渉や助言業務等を行う形態となります。
従って、どちらか一方の利益(メリット等)の極大化を図るということではなく、双方の合意形成(=成約)に向けて客観的な交渉を行っていく形と言えます。
②FAとは?
FA=フィナンシャル・アドバイザーの略であり、売手/買手いずれかの立場において、助言業務を行う形態となります。
仲介との大きな違いは、FA同士が各々の立場で専門的な助言を行うことで、依頼者の利益(=メリット)の極大化を図るという点になります。
上場企業やクロスボーダーM&Aにおいては「FA」が用いられることが一般的(将来的な法的リスクの回避)ですが、中小企業のM&Aにおいては、その目的や方法の選択が「迅速な承継」や「クローズド(情報)での承継」であることが多いことから、「仲介」で行われるケースも多いのが現状です。
(※)弊社では「仲介」および「FA」のいずれも対応が可能です。
3.M&A仲介会社の選び方
それでは、中小企業の経営者がM&A仲介会社を選ぶ際のポイントについて見ていきましょう。
①報酬体系・手数料・費用で選ぶ
M&Aを専門家に委託する際、手数料や費用が発生します。
各専門家によりその計算方法や支払タイミングは異なりますが、一般的に主な内容は下記とされています。
また、各社とも最低成功報酬額を定めているケースが多く、最終的にどの程度の費用が発生するのか、どのタイミングで支払が発生するかなどについて、事前に確りと確認することが重要となります。
(※)
弊社では、成功報酬はオーナー様の報酬が上記レーマン方式の中で最も低額となる「株価ベース」の計算方式を採用しています。詳細についてはお問合せください。
②取り扱い規模で選ぶ
M&A専門家によって、主に取り扱う規模が違う(且つ契約形態の違い(図A))などの実態についても確認が必要となります(図G)。
取扱いの規模の違いによって、各専門家が有する情報や専門性、進め方のスタイルなどに違いがあることがあり、M&Aの成否を左右する可能性があることにも留意しておく必要があります。
③強み・過去の実績で選ぶ
M&Aを成功させるために専門家に求められる要素はいくつも存在しますが、大別すると下記となります(図H)。
高い専門性を有していない仲介会社等に依頼を行った場合、M&A成立後に想定外のリスク(損害賠償の請求・簿外債務の存在等)を抱える可能性があります。
また、会計等の専門性だけがあれば良いというわけではなく、買手を探索する営業・情報力に加え、売手の業界(周辺業界含む)についての知見・見識がなければ、スムーズに成立に向けて動くことは難しいと考えられます。
過去の実績はあくまでも一つの指標ではありますが、M&A専門家が何を強みとし、どういった実績を挙げているかについても確認が必要となります。
④担当者との相性で選ぶ
M&Aの検討を開始してから成立するまでの期間は会社によってまちまちではありますが、時には長期間に亘る場合もあります。
その間、自社の財務面だけでなく弱みや課題などについてもオープンにする必要があるなど、経営者にとってはストレスを感じる場面が多々出てくることになります。
そうした中、売手のサポートを行い、M&Aの期間中に実際に経営者と伴走を行う担当者との相性は非常に大事なものになってきます。
これは、会社規模の大小やネームバリューということではなく、経営者と担当者との相性という観点で非常に重要な要素だと考えられます。
依頼をする専門家(仲介会社)の選定と併せて、担当者との面談を通じて知識やスキル、実績や人柄などを基に信頼できる良き理解者を選ぶことが重要だと考えます。
4.最後に
M&Aによる会社の売却を検討し始めたばかりの経営者にとっては、どのように専門家を選べば良いかという課題はつきものです。
今回のコラムでは、専門家別の特性や選ぶ際のポイントを解説してきました。
最大のポイントは、「自身(=自社)と伴走する会社(=担当者)」が、「どのようなサービスを提供してくれるか」、そしてそれが「自身(=自社)にとって有益か(=無理のない範囲か)」という点に尽きるかと思います。
弊社では無料相談を受け付けておりますので、M&Aでお悩みの方はお気軽にお問合せください。
大手都市銀行にて約11年間に亘り、担当先企業の資金調達/事業成長支援(約5年)及び、自行の財務企画/予算・投資管理/コスト削減(約5年)、人事研修企画(約1年)に従事。
その後事業会社にて、グループ会社全体のバイサイドM&A戦略/実務に従事。
また、運輸交通/不動産/専門商社を始めとした多様な事業分野において事業・部門戦略/再生・成長計画の策定に関与。
LBPF入社後は、主に下記事業領域を中心としたM&Aに加え、主に東海、関西及び中四国エリアのカバレッジを担当している。
<主な事業領域>
・物流業界(貨物、旅客、MaaS関連(インフラ/IT等))
・設備工事業界(電気工事、電気通信工事、管工事)
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