IT業界におけるカテゴリ別のM&Aトレンドについて、LBPF内でIT業界を担当している佐々木がご紹介します。
前回のコラムでは、IT業界の課題について触れてきました。
今回のコラムでは、IT業界のカテゴリ別M&Aトレンドについて触れていきたいと思います。
1.インターネット・Web業界
2022年5月6日におけるマーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」発表の注目キーワードランキングによると、マーケティング分野で2022年上半期1位に選ばれたキーワードはEC、2位はD2Cとなりました。
近年インターネットWeb業界は日々進化しており、D2Cを始めとする新しい販売戦略がマーケティング分野でトレンドとなっております。
ではインターネットWeb業界ではどの様なM&Aが起こっているでしょうか?
事例①買い手:ルームクリップ 売り手:bydesign(2021年)
インテリア領域に特化したプラットフォームを展開するルームクリップはインテリアD2Cブランドを展開するbydesignを買収しました。
bydesignは自社プロダクト及び他社商材の仕入、販売を行っており、ルームクリップはソーシャルコマースプラットフォーム、D2Cサービスの開発強化とマーケティング強化目的で買収しています。
家具は日用品と比較し、購買機会が少ないため、ルームクリップの持つ国内最大規模のコミュニティメディアを通して顧客の接点を増やすことを目的としています。
事例②買い手:プリマハム 売り手:TMG(2021年)
プリマハムは食肉通販サイトミートガイを運営するTMGを2021年に買収しました。
TMGは自社のECサイトだけでなく、主要なECプラットフォームでも販売チャネルを持っており、ECノウハウが豊富な企業です。
プリマハムはTMGの買収を通して食肉EC市場へ本格進出します。
プリマハムは既存事業の領域及び収益基盤の更なる強化を掲げており、その一環でD2C事業へ本格参入を掲げ、食肉EC市場において高い知名度を持つTMGを買収することで相互のシナジーを発揮する目的があります。
2.通信インフラ業界
通信インフラ企業のトレンドは5G普及によって推し進められているインフラシェアリングと保守運用事業です。
インフラシェアリングは2018年に総務省がガイドラインを公表して以来、政策としてインフラシェアリングを後押しする動きが目立っています。
これまで日本では自社で基地局を保有し、運用するのが一般的でした。
しかし、5Gが導入され、事業者の初期投資を抑えることで、通信エリアの早期拡大を目指しており、インフラシェアリングの重要性が説かれています。
また、5Gが加速する中、無線LANのWi-FiもWi-Fi6が登場し話題を呼んでいます。
同時に保守運用事業も注目されています。人口減少、飽和市場に伴い、新規顧客獲得が厳しい現状にあり、設計、施工のみならず各社保守運用事業までのトータルサービスに力を入れています。
例えば、エクシオグループは中期経営計画において、リカーリングビジネスの拡充を掲げています。
事例①買い手:ジェイタワー 売り手:ナビック(2018年)
情報通信インフラ設計・構築のジェイタワーはWifiサービスを提供するナビックを買収しました。
ジェイタワーはインフラシェアリングのリーディングカンパニーであり、主軸サービスであるインフラシェアリングと密接に関わるWifi事業を強化する為に、オフィス、ホテル等にWifiサービスを提供するナビックを買収し、サービス強化を図ります。
インフラシェアリングが拡大する中、同時にWifiサービスの共用施工や窓口の一本化を図り事業の効率化を図ります、
事例②買い手:ケイ・テクノス 売り手:西九州電建工業(2022年)
エクシオグループの子会社でケイ・テクノスは西九州電建工業を買収しました。
同社は施工技術の高さに加えて保守・運用事業にも力を入れワンストップでサービスを提供しています。
創業から30年以上の豊富な実績と高い施工技術を取り入れ、エクシオグループが掲げる「Engineering for Fusion ~社会を繋ぐエンジニアリングをすべての未来へ~」というビジョンのもと上記の買収で通信インフラ事業の拡大・拡充を図ります。
3.ソフトウェア業界
ソフトウェア業界はハードウェア業界と密接に関わっています。
例えば、スマートフォンやスマートウォッチの新型が登場した際には、それらに対応するソフトウェア開発が必要で、開発が出来なければシェアを大きく落とすことになります。
ハードウェアとソフトウェアは相互に作用して業界として伸びていく構造になっています。
ソフトウェア業界のトレンドはIOTの普及がトレンドと言えるでしょう。IOTはモノのインターネット化を指しており、例えば外出している際にスマートフォンと連携させたエアコンの電源をオフにしたり、照明のオンオフを行うことなどを指します。
その様なソフトウェア業界ではどのようなM&Aが起きているでしょうか。
事例①買い手:双葉電子工業 売り手:カブコ(2017年)
双葉電子工業はものづくりの業界において、設計者と製造工場とを独自のアルゴリズムによるネットワークで繋ぎ、ものづくり工程の合理化を進めるカブコを買収しました。
双葉電子工業は長年ものづくり業界において独自の生産技術を強みに生産器材の標準化などものづくりの合理化に貢献してきました。
双葉電子工業は近年急速に発展しつつあるIOT、AIの有効性を引き出すソフトウェアの開発力を獲得することが重要と判断し、カブコの買収を実行しました。
事例②買い手(資本参加):日野自動車 売り手:LocationMind(2022年)
日野自動車はIOTによる人流の分析・予測・コンサルティングを提供するLocationMindに資本参加しました。
日野自動車が持つ商用車、物流業界に関する知見とLocationMindのIOT技術を掛け合わせて、リアルタイムの位置情報を活用した運行管理などの物流ソリューションを開発することを目的としています。
4.最後に
今回はIT業界_カテゴリ別のM&Aトレンドについて記事をまとめました。
IT業界は今や欠かせない国の産業となっており、各業界もITの導入に積極的な姿勢を示しています。
M&Aを活用し、事業の成長を図りたい。大手傘下に入り経営の安定と人材不足、技術不足を解消したい。
このような方は一度M&Aを検討してみることも選択肢の一つとなるのではないでしょうか。
なお、IT企業のM&Aには専門知識が必要となる為、専門業者に相談することをおすすめします。
M&Aにより、IT企業の買収を検討している。IT企業を他社に譲渡したいというお悩みを抱える方は是非一度当社にお問い合わせ下さい。
大学卒業後、第一生命保険株式会社に入社。
支社管轄、営業職員約300名の成績管理、支社経営企画業務に従事。
その後、個人事業主としてwebコンサルティング業務を行う。
顧客として、ホットペッパーアワード全国1位の大手美容院から老舗時計宝飾卸小売商社、クリニック、建設会社など多くのクライアントに対するwebコンサルティング業務を行い、2021年5月にLBPFに入社。