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中小企業の後継者不足とその解決策【事業承継】


2023年12月6日 事業承継

中小企業では後継者不足への対応が急務とされています。
一般的に、団塊の世代が後期高齢者となり、日本の社会構造が超高齢化社会になることで、医療や福祉、雇用状況など、社会全体に多くの影響を与えるとされている「2025年問題」は、経営者の高齢化や事業承継の成否など、企業活動の根幹においても例外ではありません。

1.2021年の後継者不在率の状況

大手信用調査会社の調査では2021年の「後継者不在率」は60%程度(帝国データバンク:61.5%(※1) / 東京商工リサーチ:58.6%(※2))とされています。
この数字は過去10年で最も低い水準(図A/※1)とされており、中小企業庁が2017年に打ち出した「事業承継5ヶ年計画」、および「事業承継補助金」の活用や官民によるM&Aを含む事業承継に関する様々なサポート体制を背景に、高齢経営者を中心に後継者決定の動きが加速したことが要因とされています。

後継者不在率推移(全国・全業種)


経営者の年代別に見てみると「50代」のみが前年比プラス(図B/※1)となっており、自身が後継者になり世代交代が一先ず終了したことによるプラスの側面と捉えることが出来る一方、近時の新型コロナウイルスによる影響から、後継者への引継ぎ計画自体が白紙や先送りになったと見る動きも指摘されています。

 

年代別後継者不在率推移


一方、後継者難倒産件数は466件(図C/※1)と、後継者不在率の減少とは相反する形となっており、実数ベースでは倒産や廃業が増加傾向にあることにも注意が必要です。

後継者難倒産数


(※1)帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」調査(2021年)」より

(※2)東京商工リサーチ「2021年「後継者不在率調査」」より

 

2.業種別/地域別の状況

全業種において後継者不在率は減少傾向(図D/※1)となっているものの、依然高い水準となっています。また同比率は地域特性(経済圏の安定度合や業種の偏り、地域金融機関等の支援状況等)により大きな差がでている(図E/※1)と考えられ、業種やエリアに応じて後継者の選定が必要になってくることが想定されます。

業種別後継者不在率推移

都道府県別後継者不在率

3.後継者不足の原因

 中小企業において、後継者不足になっている要因は主に下記とされています。

  1. 少子高齢化による影響

    内閣府が発表する「令和3年版高齢社会白書(概要版)」では、令和2年時点での高齢者(65歳以上)の人口割合は28.8%とされており、出生率の減少と相俟って純粋に将来の経営の担い手となる母集団が減少していることが想定されます。

  2. 経営の先行き不透明感

    昨今のビジネス環境の変化(グローバル化やIT化、新型コロナウイルスによる外部環境の強制的な変化等)により、中小企業の中には厳しい経営環境に晒されている企業も多く見受けられます。
    そうした状況下、経営者の親族などが、経営の将来性を不安視し積極的に引き継ぎたがらないケースだけでなく、経営者自身がそれを望んでいないケースもあるとされています。

  3. 事業承継に時間を要する(準備が整っていない)

    事業の承継には、「準備(育成)→引継ぎ→フォロー」までを含めると、数年という期間を要することが一般的とされています。引継ぎ対象が親族である場合、事前の社内調整など多くの利害関係人(特に社内役職員)の信頼を得るというプロセスも並行して行う必要があり、承継完了までに相応の時間的な余裕が必要となります。
    承継検討のプロセスが長期化する場合、②でも記載した通り外部環境の変化や先行き不透明感などにより、途上で引継ぎ対象が承継そのものを望まなくなり、振り出しに戻るといったことも想定しておく必要があります。

4.後継者不足の解決策

中小企業における後継者不足の解決策としては、「廃業」を除いて、主に「親族内(同族)承継」「親族外承継」の2つに大別されます。

  1. 親族内(同族)承継という選択肢

    前項でも記載の通り、親族内承継を完了するまでには多くの時間を要します。
    またその決断が本当に良いものであるか否か、経営者だけでなく引継ぎ手も同様に、多くの情報や環境変化を踏まえつつ検討を進める必要があります。
    一般的には「自社内で育成」もしくは、「一定期間同業他社で修行」するといったケースが多いとされていますが、いずれにしても早期に取組を進めることが必要であることは間違いありません。

     

  2. 親族外承継という選択肢

    2017年以降、「親族内(同族)承継」の割合は低下しており、いわゆる「親族外承継」の比率が高まってきています(図F/※1)。

    就任経緯別推移

    中でも、外部招聘やM&Aといった観点では、「経営のプロ」に事業を託すことに加え、今まで自社に不足していた(もしくは将来の拡大に向けて獲得する必要があった)リソースを即時追加することが出来ることから、「承継」と「成長」を両輪で進めていくことが可能となります。

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5.最後に

近時の新型コロナウイルスの影響を受け、改めて自社の後継者問題について検討を行う経営者が多いとされています。
また、経営者の高齢化により「後継者育成が間に合わないケース」や、育成途上で経営難に陥り「承継を拒否されるケース」があることも事実です。
こうした状況に対応する前向きな解決策のひとつとして、M&Aを検討されてみてはいかがでしょうか?

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LBPF玉積

玉積 範将

大手都市銀行にて約11年間に亘り、担当先企業の資金調達/事業成長支援(約5年)及び、自行の財務企画/予算・投資管理/コスト削減(約5年)、人事研修企画(約1年)に従事。

その後事業会社にて、グループ会社全体のバイサイドM&A戦略/実務に従事。
また、運輸交通/不動産/専門商社を始めとした多様な事業分野において事業・部門戦略/再生・成長計画の策定に関与。

LBPF入社後は、下記事業領域を中心としたM&Aに加え、主に東海、関西及び中四国エリアのカバレッジを担当している。

<主な事業領域>

・物流業界(貨物、旅客、MaaS関連(インフラ/IT等))
・設備工事業界(電気工事、電気通信工事、管工事)

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