M&A業務を行っていると、会社売却を検討されている経営者から「ウチのような中小企業でも本当に売却できるのか?」といったご質問を受けることがあります。
本コラムでは、「売れる会社」と「売れない会社」について、今流行りのChat GPTと一緒に考察していきたいと思います。
1.売れる会社と売れない会社の違い
手始めに、「売れる会社」「売れない会社」について聞いてみましょう。
総論的(当然ではありますが)ですが、的を射た回答となっていますね。
「売れる会社」 = 「成長性」×「収益性」×「安定性」×「経営陣/リーダーシップ」
とは言え、ChatGPTの回答が全て正しいというわけではありません。
「売れる会社」と「売れない会社」の違いを考察するにあたっては、下記のような観点についても併せて認識しておく必要があります。
① 事業基盤 :市場占有率はどうか?(業界シェア、地域シェア等)
② 取引の安定性:仕入先/販売先との関係性はどうか?
③ 従業員 :スキル/能力/資格等、事業運営上のキーパーソンは居るか?
④ 組織体制 :特定の個人に依存していないか?仕組化されているか?
次に「売れない会社」は何を行うべきか聞いてみましょう。
即効性がある対策ということではなく、「将来的に売れる会社になるために必要なこと」という観点での回答となりました。
2.準備が大事
然しながら、日本の中小企業では後継者不足への対応が急務とされています。
(参考コラム:中小企業の後継者不足とその解決策(2022年3月25日))
では、先ほどの「対策」について、どのような「準備」していけばいいのでしょうか?
多くの中小企業においては、「経営状況の分析」や「ビジネスプランの策定」、「マーケティング戦略の策定」など、オーナー経営者の暗黙知となっているケースが多々あることは周知の事実となっています。
こうした準備段階において「外部アドバイザー」の採用についても言及がなされている点については、特筆すべき点かもしれません。
「準備段階」 = 「自社の力」×「外部の力」
(参考コラム:M&Aによる会社売却をご検討される際の留意事項~事前準備編(2021年9月10日))
この準備段階においても、既述(①~④)内容についてもしっかりと整理をしていく必要があると考えられます。
特に、買手サイドから見た際、強いリーダーシップを持ったオーナー経営者が引退する場合においては、売手事業の再現性を担保するにあたり、財務状況の整備以上に重要なトピックスとなるケースが多いためです。
3.阻害要因(経営者の心構え?)
併せて、「準備」を行う「阻害要因」についても聞いてみます。
ここでは、これまでとは少し様相が変わり、定性面(経営者の意識、組織体制、企業文化など)が主な阻害要因として挙げられています。
特に「経営者の意識の低さ」という点については、言葉通り捉えて良いということではなく、中小企業の経営者において、M&Aによる事業承継への抵抗感が強いことも、阻害要因の大きな問題となっていると考えられます。
(参考コラム:地方におけるM&A動向(2023年3月30日))
以前のコラム(経営者の年代別に見る経営および企業業績の特徴(2023年2月16日)でも解説を行った通り、経営者の高齢化が企業の成長性を押し下げているとされています。
外部環境が目まぐるしいスピードで変化を続ける昨今、継続的な企業の成長のためには、経営者自身が下記について自問自答する必要があるとされています。
①変化へ適応できているか?
②過去の成功/手法に固執していないか?
③決定力は低下していないか?
④新しいアイデアや人材を受け入れられているか?
⑤長期的なビジョンはあるか?
4.最後に
これまで、「売れる会社」と「売れない会社」の違いについて、Chat GPTの回答を踏まえ考察をしてきました。
ChatGPTの回答については総論的に正しいものが多い一方、M&Aの実務上においては、優先度の高い検討ポイントや、事前に考慮しておくべき事項等、専門家の知見と比較するとまだまだ心許ない回答が多かったように感じます。
結論から申し上げると、売れない会社を売れるようにするためには、ChatGPTの回答でも言及されたように、外部アドバイザーの知見を上手く活用し、準備を進めることと併せ、承継の一つの手法としてM&Aを選択することで、その実現可能性が飛躍的に高くなると考えられます。
特に、後継者候補の選定に悩まれている経営者の方は、前向きな検討のひとつとして外部アドバイザーへの相談を行ってみてはいかがでしょうか?
大手都市銀行にて約11年間に亘り、担当先企業の資金調達/事業成長支援(約5年)及び、自行の財務企画/予算・投資管理/コスト削減(約5年)、人事研修企画(約1年)に従事。
その後事業会社にて、グループ会社全体のバイサイドM&A戦略/実務に従事。
また、運輸交通/不動産/専門商社を始めとした多様な事業分野において事業・部門戦略/再生・成長計画の策定に関与。
LBPF入社後は、主に下記事業領域を中心としたM&Aに加え、主に東海、関西及び中四国エリアのカバレッジを担当している。
<主な事業領域>
・物流業界(貨物、旅客、MaaS関連(インフラ/IT等))
・設備工事業界(電気工事、電気通信工事、管工事)
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