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スムーズな株式譲渡のポイント 税金の種類・計算方法を解説!


2022年4月22日 事業承継

このえ税理士法人の社員の辻本です。

今回は、オーナー様の株式譲渡に関連する税金について解説します。事業承継税制についても触れておりますので、皆様のご参考になれば幸いです。

1.個人による株式譲渡は一律20%の税金

①株式の譲渡所得の計算方法

株式の譲渡所得とは、売却した代金から、その株式を取得するのにかかった金額(=取得費)を控除した差額です。
この差額が儲けとなりますが、個人による売却の場合はこの儲けに対して、約20%の税金が課税されることになります。

②株式の取得費

株式を取得するためにかかった費用は、株式の取得の方法により、以下のようになります。

  • 会社に出資して株式を取得⇒出資した金額
    例えば会社に100万円出資して、その対価として株式を取得して株主になる場合です。
  • 他の株主から株式を購入して取得⇒購入した金額
    例えば他の株主から100万円で会社の株式を購入して、株主になる場合です。ただ、相続や贈与で取得した場合、注意が必要で、もともとの所有者の取得した金額が引き継がれます。相続や贈与の時の時価ではありません。
    例えば、元々父が100万で取得した株式を相続した場合、相続した人の取得価額は相続した時の時価ではなく、あくまで父が取得した時の100万になります。
    このような取り扱いですので、取得した金額がわからないというケースも出てきます。
    そのような場合には、売却した金額の5%で購入したとみなされます。また、実際の取得費が売却した金額の5%相当額を下回ったとしても、5%相当額とすることも可能です。
    例えば、3万円で取得した株式を100万円で売却した場合、100万円の5%の5万円を取得価額とすることもできます。

2.株式譲渡損失の取扱い

①株式譲渡による所得と損失の相殺

株式の譲渡により所得が生じた場合には、上で述べた通り、所得に対し約20%の税金が課税されます。
ここで、もし、所得が生じた同じ年度に、他の株式を譲渡して損失が出た場合には、所得と損失は相殺することが可能です。
これによって支払う税金が安くなります。
ただし、相殺することができるのは、上場株式等同士あるいは、一般株式等(上場株式を除く株式等)同士の場合であり、上場株式等と一般株式等の所得と損失は相殺できない点には注意が必要です。

②上場株式等の3年間の損失の繰越

上場株式等については損失が発生した場合には、翌年から3年間、損失を繰り越す制度があります。
これにより、当年度に生じた株式売却損と向こう3年間に生じた株式売却による所得を相殺することができます。
しかし、一般株式等には、このような制度はありません。

3.株式譲渡の際のポイント

①上場株式等の場合

Ⅰ.「特定口座」と「一般口座」の違い

株式の譲渡によって生じる譲渡所得や配当金には所得税が課されます。
証券取引所に上場している株式を購入したり売却したりするためには、証券会社に証券口座を開設することになります。
ここで、所得税の納税方法との関連において「特定口座」と「一般口座」を選択することになります。

「特定口座」とは証券会社で開設できる口座の一種で、証券会社が損益の計算を行ってくれる制度のことです。

「一般口座」とは自分が保有している株式等の1年間の損益を計算して確定申告する制度のことです。

「特定口座」では、証券会社が1年間の株式取引の損益をすべて計算して年間取引報告書を作成します。
特定口座においては、確定申告の要否は次に述べる「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のどちらを選択するかにより異なります。
一方、「一般口座」を選択すると、1年間の売買損益を自分で計算して確定申告をしなければなりません。

Ⅱ.「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の違い

「特定口座」は、上場株式等についての確定申告手続きを簡素化するために設けられた制度です。
「特定口座」では、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のいずれかを選ぶことになります。

この2つの違いは、簡単に言えば確定申告を証券会社がするか、自分でするかという点です。
「源泉徴収あり」の特定口座では、証券会社が税金の計算を行い、自分に代わって申告・納税をしてくれます。
そのため、自分で確定申告をする必要はありません。
「源泉徴収なし」の特定口座では、証券会社が作成する年間取引報告書を使用して自分で確定申告をします。

②非上場株式の場合

Ⅰ.「株式譲渡」と「相続・贈与」における税金計算の違い

「株式譲渡」では個人の場合は所得税が課されます。
また、「相続」には相続税が、「贈与」には贈与税が課されます。
それぞれの税金の計算方法が異なり、大きな違いは税率に表れています。
「株式譲渡」による所得税の税率は、上で述べた20.315%で一律ですが、相続税や贈与税では、課税金額に応じて税率が異なり、10%~55%の税率が課税金額に応じて課されます。
相続した金額や贈与額が多額になればなるほど、株式譲渡による税率より多くの税金が課されることになります。

Ⅱ.時価とかけ離れた金額で売却した場合の税金

上場株式等は証券取引所で売買されるため、市場価格で取引されます。
従って、売買価格を売り手と買い手が相談して自由に決めることはできません。
これに対し、非上場株式では証券取引所を通さず、売り手と買い手の交渉や合意によって売買価格を決めることができます。

ここで、仮に、売り手と買い手が親子だった場合、
例えば、「子供だし、安く売ってもいいだろう」という気持ちが入っても不思議ではありません。
このようなケースで、株式の時価を無視して、当事者同士で自由に売却金額を決めてしまうと課税の公平の観点から問題が発生します。
結論をいうと、株式の時価とかけ離れた金額で売却した場合、時価と実際の売却代金との差額について、受け取った側に贈与税が課税されます。

例えば、時価9,000万円の株式を子供に対して1,000万円で売却したとします。
この場合には、差額の8,000万円に対して贈与税が課されることになります。
親族や従業員だからといって、自由に売却価格を決めると、贈与を受けた人に思わぬ多額の税金がかかることになるので注意しなければなりません。

4.株式等の譲渡に係る主な特例

非上場株式を事業承継時に相続または贈与することについては、事業承継税制という特例があります。
こちらは平成30年度税制改正の際に、事業承継問題に対応するために新制度として創設されました。

これは非上場株式を相続または贈与する際に、同時にその会社の事業を引き継ぐ場合、該当するすべての非上場株式に対して課税される相続税または贈与税は100%猶予されるというものです。また複数の株主から、代表者である3人までの後継者であれば対象となるため、親族だけでなく第三者への承継も適用されます。
この猶予された税額は途中で取り消しにならない限り、後継者の相続または贈与が発生することで、猶予されていた税額が免除となります。
ただし、事務手続きがかなり煩雑なことや制度として非常に複雑であること、また取り消しリスクが存在することなど、注意すべきポイントも多くあるため、税理士などの専門家に相談しましょう。

5.個人が株式譲渡した場合に係る税金

①所得税

個人が会社を株式譲渡で売却した場合にかかる最大の税金は所得税です。
所得税には10個の種類があるのですが、株式譲渡で売却した場合にかかるのは、このうち譲渡所得税と呼ばれるものです。
譲渡所得税のみの税率は15%ですが、下記で解説する住民税・復興特別所得税と合わせて、税率は20.315%になります。

②住民税

住民税とは、1年間の所得に対して、地方公共団体に納める税金です。
厳密には都道府県民税と市町村民税に分けられています。
所得税と違って、前年の所得に対して課税されるのが特徴です。
譲渡所得の場合は、住民税の税率は5%になります。

③復興特別所得税

復興特別所得税とは、2013年~2037年の間、東日本大震災からの復興のための財源にあてる目的で課税される税金です。
復興特別所得税は所得税の2.1%の税率がかかります。
譲渡所得の場合、税率は15%なので、この2.1%である0.315%が課税されます。

6.最後に

今回紹介した税金の種類や計算方法を理解し、株式譲渡をスムーズに進められるようにしましょう。
また、特に税務に関する事は頻繁に制度が変わります。
そのため、税務などの専門知識は、最終的な判断をする際には税理士に相談することをおすすめします。

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このえ税理士法人 辻本

監査法人トーマツにて監査業務を経験後、複数の税理士法人で法人税・相続税を中心とする税務業務に従事。
また、税理士法人勤務時には三井住友銀行に出向し、多数の相続対策の提案業務にも従事している。
このえ税理士法人設立に伴い、LBPFグループにおける税務部門責任者として参画。
主に法人税・所得税・相続税を中心とした税務顧問・税務アドバイス業務を担当するほか、組織再編税制、事業承継税制などのプランニングにも従事。

このえ税理士法人はLBP FAS株式会社のグループ税理士法人です。

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